昔あった茅葺き民家や古民家と言われる建物。その強さの源は囲炉裏から出る煙で全体を 「燻し乾燥」の状態にする事にありました。 この「煙」「燻し乾燥」という不思議な自然の力を、現代の木材に活かしたものが燻煙熱 処理材木です。 この燻された構造材には、昔の人が意図していたかはわかりませんが、いくつもの メリットがありました。 燻される事により耐久性が高くなる。水分を燻しにより少しずつ抜くため木材にストレス がなく、割れが非常に少ない。そして藁葺き屋根に代表されるように防虫効果が非常に高 く、防蟻薬剤処理自体が無かった時代に白蟻や害虫から構造自体を守っていました。 「千葉の森の家」で建てる家の構造は、ここ千葉県の樹齢60~70年を経た、杉、檜が中 心でその木材に燻煙熱処理を一括して施しています。石油燃料を使わず、柱や梁の製造過 程で出る、木の皮や枝、端材などを燃やして出る煙で、じっくり燻すことで、曲がりや反 りなどの木のクセを緩和し、調湿効果や防虫効果など、木の持つ特性をより引出す事がで きます。 昔からありながら最新の乾燥技術。燻煙乾燥は昔の知恵と今のテクノロジーを繋ぐ温故知新の技術なのです。
燻煙熱処理は、化石燃料による蒸気式乾燥設備に比べ、100立米の木材を乾燥させるのに40~60万円のコストを削減できるだけではなく、化石燃料でない、木材自体の皮や端材を燃料として使用することは、CO2や有害物質の殆ど出ない(着火時にはガスを使用します)バイオマス燃料で、これだけとってみても、圧倒的にいわゆる地球に優しい乾燥方法といえると思います。 現在主流の木材の9割以上が高温乾燥をしています。短時間で終わるのがメリットですが、内部で干割れが生じてしまいます。高温乾燥は加熱温度120℃~140℃の高温で24時間以上処理し、材の表面を急速に乾燥させます。 この事により、急速に木材が酸化劣化をさせているという事は余り知られていません。木材にストレスがかかり、内部がひび割れをしている様子がお分かり頂けていると思います。
燻煙乾燥の最も大きな特長は釜の温度を45℃に抑え、丸太状態で一度、そして角材に製材をした後にもう一度45℃の低温で乾燥をさせます。 木材自体にストレスがなく、「燻し」という遠赤外線で木材の「芯」から温めます。そうする事で表面と木材の芯部分での乾燥の差異が少なく、狂いのない良質な建築材へとなっていきます。まさに「生きている素材」になります。 木材の安定、室内調湿効果(一般の乾燥材の2.5倍)、消臭効果、防虫・防カビ効果が得られ、他にも本来、木がもっている多くの効用が本格的に燻煙することにより、さらに発揮されていきます。
木にとって良いことは、結果的に人体にも良い結果を出します。人の暮らしにも当てはまる効用として活かされます。
最近、木の良さが見直され、木造の校舎を建てる学校が増えています。これは今までのコンクリート校舎に比べて、ストレスやケガの発生が少なく、子ども達の心にも良い影響を与える結果が出ていることが理由とされます。また、木の香りには“フィトンチッド”が含まれ、育ち盛りの子ども達には最適の空間となります。
日本は森林国家です。
しかし、今は約7割の建材を外材に頼っています。私達は日本の木材は素晴らしいと思っています。そして工務店とは地域特性と共に歩むべきという理念を持っています。自然サイクルの循環と地域社会還元も含め、加えて国産材の失地回復のカギでもある本格燻煙を、ここ千葉という地で標準仕様として取り組んでいきたいと考えています。